台湾での語学学校生活が本格的に始まり、毎日の授業に加えて宿題も出るようになった。リスニングやスピーキングの練習はもちろん、地味に厄介なのが「書取り」の宿題。日本語を使っている自分にとって、漢字の書き取りなんて楽勝だろうと思っていたのだが、実際にやってみると意外な落とし穴があった。
クラスには非漢字圏の学生も多く、彼らにとっては「漢字を書ける」というだけで尊敬の眼差しを向けられる。「君は漢字が書けるのか!?」「すごい、うらやましい!」と英雄扱いされ、ちょっと優越感に浸る。しかし、そんな気分もつかの間、書取りの宿題を提出すると、先生からまさかの減点をくらう。
「え、なんで?」
ノートを見返してみると、減点の理由は「漢字の違い」だった。日本語と台湾の中国語(繁体字)では、ほとんど同じに見えて実は違う漢字があるらしい。例えば、「歩」を書いたつもりが、台湾では「步」と書くのが正解。「産」は「產」、「録」は「錄」、「頼」は「賴」。どれも似ているけど、よく見ると確かに違う。
全く違う漢字なら間違えない。例えば、「万」と「萬」のように明らかに違う場合は、意識すればすぐに覚えられる。しかし、ちょっとした違いのせいで減点されるのは悔しい。しかも、字の形だけでなく、筆順や「跳ね方」も違うらしい。先生には「台湾の書き方を覚えてね」と言われるが、これがなかなか難しい。
授業中、非漢字圏の学生たちが必死に漢字を書いている横で、こちらは「えーと、『争』じゃなくて『爭』だったよな?」と細かい違いを気にしながら宿題を進める。こういう微妙な違いは、日本語を知っているがゆえに間違えやすいのかもしれない。
とはいえ、発音に関しては完全に負けている。特にタイやベトナムのクラスメイトは、発音がめちゃくちゃ上手い気がする。授業中に「你可以再說一次嗎?」(もう一度言ってもらえますか?)と先生に言われるのは、いつも自分のほうだったりする。漢字が書けるというメリットはあるものの、発音という壁が待ち構えているのだった。
こうして、「漢字は知っているけど間違える」というジレンマに苦しみながらも、少しずつ台湾の漢字のルールに慣れていく日々が続く。
次回、朝ごはんの選択肢について!